学生であっても株取引のために口座を開設することができますし、実際の取引も開設した口座で可能です。特に20歳以上であれば、学生という身分に関係なく自由に取引することが可能です。
また、未成年の学生でも取引することは可能なので、それに対するフォローが行き届いた証券会社に口座を開設すれば力になってくれることでしょう。
株の始め方がわかない学生でも最近のネット証券はサポートがしっかりしているので、口座開設から初めて実際に取引可能になるのはいくつかのポイントを押さえておけば足ります。
学生が株を買う2つのメリット
日本は比較的安全な社会であることから、リスクに対面することはそれほど多くはありません。しかし、リスクへの対処の仕方については日ごろから勉強や準備をしておきたいものです。
そうしたリスクへの感覚を磨いてくれるものとして株式投資はうってつけだと思われます。特に以下のようなメリットがあるので学生のうちから株式投資を経験しておくと、後々大きなリターンが期待できます。
長期投資のメリットをフルに受けられる
株式市場は長期的に見れば概ね拡大してきました。世界的に見れば今後も人口が増える地域を中心に世界経済全体は成長していくものと予想されており、株式市場もその拡大に歩調を合わせて成長企業がこれからも出てくることになります。
株式会社は年数を経て大きく成長していくため、結果が出るまではどうしても10年単位の長期投資が必要になります。
老後の楽しみという場合にはある程度の短期間で投資を回収しなければなりませんが、学生は数十年単位で長期投資をすることも可能です。
長期的視点であれば、世界経済の恩恵を受ける投資はそれほど難しくはないといえます。
株を通して経済を勉強できる―就職にも有利
株式投資では買う株を選択しなければなりません。この選択が正しければ将来リターンが返ってきます。十分に対象の会社を研究して投資することになりますから、経済の勉強になります。
名前を知っているというレベルから、どのような事業でどれぐらいの利益を稼ぎ出しているのか、将来の成長戦略の市場の評価などハイレベルな経済知識を自分のものにできるようになります。
こうした知見は学生であれば将来の就職に役立ちます。自分なりの経済知識を活用すれば面接などでも大きなアドバンテージになるのは間違いないでしょう。
学生が株を買う2つのデメリット
学生が株を買うことにデメリットもあります。以下では2つのデメリットを紹介します。
①経験値の少なさ
投資の世界はすべての人が厳しい競争条件の中でしのぎを削っている世界です。その道20年で株式投資が本業というような猛者も市場に参加していて、ネット取引で株を注文しているとそうした戦いの場であることを自覚しないまま取引をしてしまいがちになります。
気軽に投資を始めることは悪いことではありませんが、自分の資産を守る経験値が少ないことは自覚して取引に参加すれば大きなやけどはしないですむでしょう。
②安易な小遣い稼ぎに走りがちになる
お金もうけとなればついつい時間もかけて過度なリスクをとりやすくなります。学生のうちから大もうけした経験をしてしまうと、その快感を再び得るために過度な取引をしてしまいがちになります。
サラリーマンであれば日々の仕事がメインになりますから優先順位がつけやすいですが、学生の場合に道を踏み外すことのないようにしたいものです。
株は学生でも小額で始められることからハードルは低いですが、学生が株を取引するのはあくまで投資や経済の勉強というつもりでやることをおすすめします。
学生の株の始め方
株の売買を始めるためには、証券会社への口座開設が必要になります。学生の場合、親の同意が必要になることもあるので注意が必要です。順を追って説明していきます。
証券会社を決める
株取引を始めには証券会社に口座を開設しなければなりません。学生であれば、パソコンやスマートフォンの操作は日常的に行っているので、手数料の安いネット証券を中心に、どの証券会社にするか検討すると良いでしょう。
人気の高いおすすめの証券会社を3社あげておきます。それぞれの証券会社の特徴にも触れておきます。
マネックス証券
ネット証券大手の一角である「マネックス証券」は、個人投資家をターゲットにした運営で定評があります。学生や未成年に対しても手厚いサポートを実施することでは他の追随を許さないといえるでしょう。
小学生も株式取引をやっているようです。もちろん、親権者の管理のもとでという制約はありますが、口座開設・取引に関して年齢を理由に制限していません。
「小学生でも株取引ができる」という証券会社は他にはありませんから、それだけ株を始める学生に優しい証券会社といえます。
SBI証券
ネット証券の口座数ナンバーワンを誇る「SBI証券」は、サービスでもトップクラスの証券会社です。学生向けではありませんが、先行して手数料を下げて顧客の取引コストを下げてきた経営姿勢は、長く利用するにはうってつけといえます。
15歳以上を取引主体と想定しているので、サイト作りも初心者や学生でも取引しやすい配慮がなされています。
必要書類を準備する
口座開設をするには証券会社から必要資料を取り寄せて、記入の上で返信します。このとき、本人確認書類や未成年であれば親権者の同意書類なども必要になります。詳細は各証券会社に確認する必要がありますが、提出書類は厳格にチェックされます。
各証券会社には法令順守の厳しい規制がかけられているため、年収や勤め先などの記入やマイナンバーまで必要になったりしています。
厳しい規制は金融市場の公平性を保つことやインサイダー取引などの金融犯罪を未然に防ぐ観点から必要です。個人情報の提出は嫌なものですが、株取引には当然必要になるものですので証券会社に協力してあげましょう。
学生が覚えておきたい所得控除と税金の関係
学生のみなさんが株取引を始める上では、所得控除と税金の関係も頭に入れておく必要があります。学生のほとんどは親の扶養に入っており、所得税法上の控除対象扶養親族(言葉が難しいですね)である限り、親は一定金額の所得控除を受けられるからです。
具体的には、以下の金額の所得控除を受けることができます。
扶養親族の区分 | 親の控除額 |
---|---|
控除対象扶養親族 | 38万円 |
特定扶養親族 | 63万円 |
控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。なので、高校生以上の方が対象者となります。
特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。高校を卒業した大学生や専門学生の方が主な対象者になります。
株取引は高校卒業後に始める方が大半であることが考えられますが、特定扶養親族である限り63万円の扶養控除を親は受けることができるのです。
扶養親族と認められる条件
ただし、扶養親族と認められるためには、基本的には年間の合計所得金額が38万円以下であることが必要です。合計所得金額の内訳には、株取引の売買益である「株式等に係る譲渡所得等の金額」が含まれますので、売買益が38万円を超えると扶養親族から外されます。
アルバイトなど給与収入がある場合は、給与収入から給与所得控除を引いた給与所得が38万円以下のときに扶養控除が認められます。
アルバイトは年間103万円以下にしなさいと親に言われることがあると思いますが、これは給与収入が103万円のとき給与所得控除額が65万円となり、扶養親族として認められる38万円の給与所得になるからです。
そのため、アルバイトと株取引を掛け持ちしている場合は、以下の範囲の所得であれば控除から漏れることはありません。
給与所得+売買益(株式等に係る譲渡所得等の金額)=合計所得金額≦38万円
売買益にかかわらず扶養を受ける方法
一方で、証券会社への口座開設の際に、「源泉徴収ありの特定口座」を利用すると、株でどんなに利益を出しても扶養から外されません。源泉徴収された譲渡益は、合計所得金額の計算に含めなくてもよいとされているからです。
ただし、合計所得金額が38万円を超えて確定申告する際には、扶養から抜けてしまうので注意してください。「源泉徴収ありの特定口座」は株式の売買益の申告を証券会社が肩代わりしてくれる制度ですが、税金を押さえるために損益通算し、自分で確定申告することもできます。その確定申告の際に38万円を超えると扶養が外れるので、しっかり計算する必要があります。
ちなみに、「源泉徴収なしの特定口座」か「一般口座」を選ぶと、合計所得金額が38万円を超えた時点で扶養が外れてしまいます。これら2つの口座は確定申告が義務だからです。
以上から、学生のみなさんは「源泉徴収ありの特定口座」での口座開設が最も無難でしょう。
学生向けの株の勉強方法
何も勉強しないで株式市場に突っ込んでいくのは無謀です。株式市場に参加するのであれば勉強は必要ですし、市場の研究は投資家をやめるまでずっと続ける必要があります。
学生であれば、サラリーマンに比べれば時間に余裕があるはずなので、以下に挙げるうちのひとつでも初めてみてはどうでしょうか。
日経新聞
日本を代表する経済紙である「日経新聞」は、経済関係の情報量と質に関しては一歩抜きんでています。金融市場の欄も見開き2ページなので、毎日見ておきたいところです。
株式市場で上がった銘柄とその理由を毎日追いかけていれば、比較的早くどのあたりが「熱い銘柄・業界」なのか分かってくると思います。業界がつかめてきたところで銘柄の絞り込みを始めてみましょう。
ワールドビジネスハイライト(テレビ東京)
日経新聞を読まない、新聞は嫌いという人は「ワールドビジネスハイライト(テレビ東京)」をおすすめします。最近ではアプリでダウンロードしてみることができるようになっているので移動中でも比較的見やすく快適です。
欲望と幻想の市場(エドウィン・ルフェーブル)
少し変わり種ですが、「欲望と幻想の市場」という古典的な著作をお勧めします。株式投資を始めてから絶頂期を迎え王者として君臨するまで、個人投資家としての成長過程、陥りやすい罠など、投資経験が長くなって分かってくることも書かれています。
投資経験が長くなっても折に触れて読み返すことで初心に戻れる名著です。
学生での投資は貴重な経験になる
学生が投資をするということはとてもいい経験になります。世界的に見ればこれほどリスクの少ない国は無い中で貴重な経験ができますから、それだけでも価値があります。
また、金融スキルを上げることは学生が就職してからも絶対に必要なことです。自分の資産は自分で守っていかなければなりませんし、家族ができればなおさらです。
「分からないからやりません」というスタンスは一見潔いように見えますが、お金は生き方を制約されない程度には必要です。必要な資金を確保するために、学生のうちから投資の世界で一歩踏み出してみてはどうでしょうか。