普段のニュースで株価を頻繁に耳にする方は多いと思います。「東京株式市場で日経平均株価が大幅に3日続落」などという言葉を聞いたことがありますよね。
しかし、「日経平均株価」に加え「株価」自体の実態がつかめていないことが実情であると思います。そこで、株価の定義を明確にし、株価が株の取引に作用している部分まで掘り下げて見ていきたいと思います。
株価は1株の価格のこと
株価とは、1株あたりの株の価格のことです。株式市場には株式会社が発行した分だけ株が存在し、投資家の「需要(買い)」と「供給(売り)」の関係の中で価格が付けられています。
つまり、買いたい人よりも売りたい人が多ければ株価は下がり、売りたい人よりも買いたい人が多ければ株価は上がるのです。
株価が上がっても会社は直接儲からない
ちなみに、株価が上がっても会社は直接儲かりません。なぜなら、株式市場は発行された株を株主が転売する場であり、会社がダイレクトに関与することはないからです。
むしろ逆で、会社が儲かることで株価が上昇します。正確にいうと、会社の業績が上がる予想が市場全体で高まることで、株価は上昇トレンドに向かう可能性があります。
株価と配当の関係
株価が上昇トレンドに向かうのは、会社の業績と配当に関係があります。
株主になると、会社があげた利益を配当として得ることができます。配当は利益の分配ですから、業績が良ければたくさんの配当をもらうことができます(増配)。反対に、業績が悪い時には配当が減らされます(減配)。
かなり単純に説明すると、会社の業績が上がることによる増配を期待して、株価が上昇することが起こりうる訳なのですね。
日経平均株価とTOPIX
株価といえば、日経平均株価とTOPIX(トピックス)の概念を忘れてはいけません。特に、日経平均株価はニュースなどで耳にする機会も多いですよね。
日経平均株価とは
日経平均株価とは、日本で最も大きな株式市場である東証(東京証券取引所)の一部に上場している約1,900の銘柄の中から選ばれた225の銘柄の平均値をいいます。
東証には一部と二部がありますが、一部は上場審査基準と呼ばれる厳しい基準が設けられています。基準を通過できる企業は自力のあるエリート企業ともいえ、実際トヨタや三菱UFJなど日本の名だたる大企業が名を連ねています。
日本国政府の経済統計としても使われる日経平均株価が、日本経済の重要な指標であることがおわかりいただけたでしょうか。
TOPIX(トピックス)とは
TOPIX(トピックス)とは、東証一部に上場している約1,900の銘柄の時価総額合計を全銘柄で割った数値のことです。日本語で東証株価指数とも呼ばれます。
1968年1月4日当時の時価総額(8兆6020億5695万1154円)を100として、現在のTOPIX指数が弾き出されます。
実は株価自体にあまり意味はない
実は、1株あたりの株の価格である株価自体を見ても、あまり意味はありません。時価総額を発行株式数で割った時の価格に過ぎないからです。
時価総額=株価×発行株式数
時価総額は、株価×発行株式数で求められます。たとえば、A社は現在1,000円の株価を誇る株を、100株発行していたとします。この時の時価総額は、1,000円×100株で100,000円になります。
対してB社は現在100円の株価を持つ株を、2000株発行していたとします。この時の時価総額は100円×2,000株で同じく200,000円です。
A社とB社の時価総額
A社 | B社 | |
---|---|---|
株価 | 1,000円 | 100円 |
発行株式数 | 100株 | 2,000株 |
時価総額 | 100,000円 | 200,000円 |
A社はB社よりも10倍株価が高いですが、B社はA社よりも発行株式数が20倍多いため、時価総額は2倍となります。つまり、株価だけに注目すると、企業価値を計る時価総額を見誤る可能性があるのですね。
日本の時価総額トップはトヨタ
実際に日本企業の時価総額を見てみましょう。日本企業の時価総額1位は約25兆3721億円のトヨタです(2015年12月10日現在)。日本の平成27年度の一般会計予算が約96兆円ですから、その4分の1の企業価値を誇るトヨタの規模の大きさを垣間見ることができます。
続いて約11兆446億円の三菱UFJ、約9兆6117億円のNTTドコモと続きます。
日本の時価総額トップ3(2015年12月10日現在)
時価総額(円) | 株価(円) | |
---|---|---|
トヨタ | 約25兆3721億円 | 7,601.0円 |
三菱UFJ | 約11兆446億円 | 779.5円 |
NTTドコモ | 約9兆6117億円 | 2,352.5円 |
ここで株価に注目していただきたいのですが、時価総額2位の三菱UFJの株価が779.5円であるのに対し、3位のNTTドコモは2,352.5円と上回っています。株価と時価総額は必ずしも比例しないことが確かめられたと思います。
時価総額は企業買収の参考価格
株式投資においては、企業の価値を市場の株価で評価した時価総額が重要な指標です。株式会社は株主のものですから、株価と株式発行数を合わせた時価総額が企業買収の参考にされることもあります 。
時価総額も絶対的な基準ではない
しかし、時価総額も実は絶対的な数値ではありません。なぜなら、株式市場で株が過大・過小評価を受け、本来の企業価値と乖離した株価が弾き出されることがあるからです 。
著名な企業の場合、大量の資金を注入して投資を行う「機関投資家」がマネーゲームを仕掛けることがあります。機関投資家は、一流大学で金融工学を学んだプロの投資家で、株式を大量保有することで株価を高め、利益を出そうとしています。
そのため、将来的な利益の見込みが薄くても、機関投資家に利用され時価総額が跳ね上がることがあるのです。ですから、時価総額以外の指標を利用して企業の本質的な価値を見出し、過大・過小評価を常に見極め続ける必要があるのです。
企業の本質的な価値を見出し株価と照らし合わせれば、割安・割高な株を見極めることができるのです 。