信用取引について

株式投資の経験がなくても、「信用取引」という言葉を耳にしたことがある人はいるかと思います。「自分の信用で取引する投資」というのはなんとなく分かるとしても、「具体的にどんな取引だろう?」と疑問に思うはずです。ですが、これから信用取引を始めようと考えている人が、よく知らずに始めるのはリスクを伴うことです。

そこで、信用取引を始める前に知っておきたい基礎知識について解説します。

信用取引が必要とされるのには理由がある

信用取引とは、投資家自身の信用により自己資金以上の金額で投資を行うことです。具体的には、証券会社に預けた現金や買付けた保有株式を担保にして、証券会社から現金を借りて買付けをしたり、株式を借りて空売りを行ったりします。

株式投資の取引としては現物取引もあるのに、どうして信用取引を行う必要があるのかと疑問に思われる方もいるでしょう。

株式市場に参加している人が信用取引を利用すれば、より活発に株の売買が行われるようになり、流動性が増します。大きな需要が生まれることにより、市場において公正に価格形成がなされる働きが期待できるため、信用取引が必要とされているのです。

もし信用取引が存在せず現物取引だけなら、手持ちの資金、あるいは、自分の持っている株式だけで取引することになります。しかも取引はすべて買いからスタートしなくてはなりません。これでは大量の需要が発生することはなく、流動性も低下します。その結果、株価のボラティリティ(変動率)が増大して適切な株価が形成されづらくなったり、株式を現金化するのが容易でなくなったりと、リスクが高まってしまいます。

株式を大量に保有している一部の人だけで取引されて株価が決まるよりは、多数の投資家の価値観の影響を受ける方が適正な市場価格が形成されやすいのです。これを手助けするものとして、信用取引は必要とされている訳です。

信用取引の買建て・売建ての仕組み

信用取引において、株式を買うことを「買建て」、株を空売りすることを「売建て」といい、このどちらかを選んで売買を始めます。ここではそのやり方についてお話しします。まずは以下に示す注文の4要素を決めて、証券会社に注文指示を出すことになります。

  1. 売買の別
  2. 銘柄
  3. 数量
  4. 価格

買建て注文の仕組み

株式を信用取引で買建てする場合は、現物株式の注文をする時と同様、買建て注文の成立以後、株価が上昇すれば利益が出ます。リスク管理上、損失が一番大きくなるのは、買付けた会社が倒産して投資金額の全額が失われる場合です。反対に、株価が上昇すれば利益は青天井です。

投資家が信用取引で買建ての注文を執行した際、証券会社から資金の融資を受けて株式を買い付ける仕組みで、返済時は日割りで金利を返済することになります。

売建て注文の仕組み

「売建て」とは、現物取引と違い、株を保有していない状態で売りのポジションを持つことができる取引のことです。投資家が証券会社から株式を借り入れて市場で売却するという仕組みで、「空売り」という呼称が一般的です。

売建て注文が成立したのち、株価が下落した場合に利益を得られます。株式の買付けと反対に、企業が倒産等の状況に陥り株式が無価値化した場合、利益が最大となります。一方で、株価が上昇すればするほど損失が膨らみ、投資額以上の損失を出す恐れがあります。

空売りは儲けを出す機会を増やせるため便利な一方で、有名な格言で「買いは家まで、売りは命まで」というものがある通り、リスクが非常に高い取引だということを認識した上で行うようにしましょう。

信用取引の3つの取引制度

信用取引には、制度信用取引と一般信用取引があります。それに加えて、大手ネット証券3社ではデイトレードに限定した当日限定の信用取引サービスが行われています。

①制度信用取引

証券取引所が「直前事業年度で債務超過をしていない」等といった一定の基準のもと選定した銘柄のみが利用できます。返済期限は6ヶ月以内です。選定基準を満たし、空売りが可能とされた銘柄のことを特に貸借銘柄と呼びます。

②一般信用取引

信用買いではほとんど全ての銘柄で利用できる取引です。金利と返済期限は証券会社が自由に決められ、3年から無期限と長い期間利用できるところにメリットがあります。一方、信用売りについては取り扱いをしてない証券会社が多く、扱っている会社でも銘柄は限られます。

③当日限定の信用取引

大手ネット証券のうち2社で、1日のうちに売買を完結させる日計り(ひばかり)取引に限定した信用取引サービスが利用できます。会社ごとにサービスの名称が異なりますが、SBI証券では「日計り信用」松井証券では「一日信用取引」といいます。

2社ともに1約定あたり300万円以上の取引であれば金利や貸株料が0%になる他、SBIと楽天では1約定あたり300万円以上、松井証券ではそれ未満の約定金額でも手数料が無料になるなど、コスト面でメリットを感じるサービスです。

また、一般信用取引でしか空売りができないような新興市場銘柄を売り建てできるサービスもあります。SBI証券では「HYPER空売り」松井証券では「プレミアム空売り」という名称が使われています。これらのサービスは空売りを行う際に少し割高な手数料がかかるデメリットはありますが、値幅が大きくなりがちな小型株で大きな利益を狙えるということで、個人投資家に人気があります。

これらはあくまで当日限定の信用取引ということで、当日で反対売買を執行せず翌営業日以降にポジションを持ち越した場合、ペナルティが発生した上、翌営業日の寄り付きで強制決済されてしまいます。利用する場合はこの点も注意が必要です。

信用取引にかかる手数料について

現物の株式を取引する場合は売買手数料だけが必要ですが、信用取引の場合はそれに加えて金利や貸株料もかかります。いずれも証券会社ごとに料金体系が異なっているため、確認した上で取引することが望ましいです。

①手数料

通常、売買注文の成立時に証券会社に支払うものです。現物株式と手数料体系が違うことが多いですが、現物注文よりも安い料率に設定されていることが多いです。証券会社によっては、一定の条件のもと無料になることもあります。

②金利

投資家が買いの建玉を保有した場合、証券会社が徴収するものです。日割りで金利がつき、買いのポジションが決済されると同時に支払います。

③貸株料

投資家が売りの建玉を保有した場合、証券会社に当該株式を借りた日数分を支払うことになります。計算は受渡日ベースです。

④逆日歩(品貸料)

貸借銘柄のうち、空売りが集中するなどして証券会社やそこに株を融通する証券金融会社ですら株を調達することが難しい「株不足」の状態になった場合、足りない株を大株主などから借りることになります。その際の調達コストは株を貸し出されている投資家が負担し、買い方へ支払われることになります。

この、投資家が負担する調達コスト逆日歩といいます。

制度信用の売建てをしていたポジションを解消するときに、受渡日ベースでの保有期間(土、日、祝日を含む)での合計額をまとめて支払います。逆日歩が1日に1円となった場合は、1,000株の保有であれば1日1,000円、10,000株の保有であれば1日に10,000円と、他のコストに対しても割高になることがあります。空売りを行う際はこの項目についてチェックするようにしましょう。

信用取引の配当金について

信用取引で買建てた株式は投資家の名義にならないため、定められた権利確定日をまたいで保有していたとしても株主優待受けとることができません。また、同様の理由で配当も受取れませんが、証券会社に規定の名義書換料を徴収された上で、配当金相当額が「配当調整金」として支払われることになります。

売りのポジションを持ち越した場合は、当該銘柄が配当を出す場合は、配当金に相当する額を証券会社に支払う必要があります。

信用取引の審査について

日本では、信用取引の口座開設をする際に審査があります。これは証券会社ごとに基準が異なっており、たとえば証券総合口座を開設してからの期間や年齢、資産規模、投資経験などといった項目を満たしているかどうかが問われます。

また、審査の方法についても会社によって違い、面談が必要になるケースや、電話での質疑が発生するケース、WEB審査のみで完了するケースがあります。

社内審査の日程も、即日完了する証券会社もあれば、1週間ほど必要になる場合もあり、まちまちです。

>> 証券会社の口座開設方法

信用取引はいくらから始められるか

信用取引の最低委託保証金額は30万円以上ですので、差し入れる担保としてこの額を用意できれば、信用取引を始めることが可能です。

あるいは、すでに保有している株式や投資信託などが代用有価証券として利用できれば、その掛目(銘柄や証券によって違いがあります)に応じて新たに現金を用意する必要がないかもしれません。

ただ、担保として代用有価証券を利用する場合はその値段が下落した場合などで追証(おいしょう)が発生し、追加での入金を迫られる可能性もあります。

信用取引の3つのメリット

信用取引のメリットは、以下の3つがあります。

自己資金以上の取引ができる

信用取引では自己資金以上の売買が可能です。約定代金に対して「委託保証金率」をかけたものを「委託保証金」といいます。信用取引では、証券会社に委託保証金をおさめることで、少額で大金を動かす「レバレッジ」を効かせた取引ができます。

たとえば、現物取引は、自己資金100万円で100万円分の取引しかできません。しかし、信用取引では、自己資金の約3倍の金額を売買できますので、自己資金100万円で300万円分の取引ができます。現物取引と同額の自己資金で運用を行う場合と比較して、約3倍の利益を得ることも可能になるのです。

自己資金にかけられる委託保証金率は法令上、30%以上かつ30万円以上の範囲内で設定されます。たとえば、代表的なネット証券であるSBI証券の委託保証金率は33%であり、自己資金100万円の場合は約303万円の取引が可能です。

株価が下落している場面でも利益を出せる

現物取引においては、株が安いときに買って値上がりしてから売却することで利益を獲得します。そのため、株式を買うことの出来る場面は限られてきます。

ところが、信用取引においては、株式を買わすに借りるという「空売り」ができます。空売りでは、自己資金などの担保を元に株式を証券会社から借りて市場で売り、株価の値動きがあった後に、株式を買い戻して決済します。株価が下落している場面でうまく取引すれば利益を出せるため、収益機会を増やせます。

差金決済ができる

現物取引では、同じ日にある銘柄を売却した代金を使って同じ銘柄を買う「差金決済」が禁止されています。ですが、信用取引ではこれが可能です。1日に何度も同一株式の売買を繰り返せるため、資金を効率的に使うことができ、収益チャンスが格段に広がります。

信用取引のデメリット

信用取引のデメリットは、以下の3つがあります。

大きなリスクがある

自己資金の約3倍の取引ができるため、株価が暴落した場合には大きな損失を被ることもあります。取引のためのお金や株式を借りているわけですが、損失が出ることによって返済できなくなれば破産するリスクもあります。

たとえば、100万円の自己資金で300万円の信用取引である株式を購入したとします。その後、株価が下落して150万円になったとすると、損失は300万円-150万円=150万円となります。証券会社から借りているお金は300万円-100万円=200万円です。したがって、200万円-150万円=50万円が証券会社への借金として残ります。

コストがかかる

信用取引ではお金や株式を証券会社から借りるため、無金利では済みません。株式を買い戻して決済する際には、金利を支払わなくてはなりません。したがって、取引にかかる売買委託手数料以外に、金利というコストがかかってきます。取引量が多くなれば、支払う金利も多額になるというわけです。

追証(おいしょう)を支払わなくてはならないことがある

信用取引においては証券会社からお金や株式を借りる際には、現金か株式を担保として提供する必要があります。

自分の保有している株式を担保とする場合、その株式の株価が下落してしまうと担保価値も下がってしまいます。その場合には、証券会社から追加で担保を提供するよう請求されるというのが追証です。

追証が発生すれば翌々営業日までに追加で担保を入れる必要があり、もし入れることができなければ保有株式は自動的に売却され、返却処理されてしまいます。追証が発生すると投資家の精神的・金銭的負担は非常に大きくなります。

投資の幅が広がる信用取引

信用取引を始める前に知っておきたい基礎知識について解説しました。

信用取引には現物株式の取引に比べて高いリスクがありますが、レバレッジを効かせたり株価下落時にも利益を求めたりすることで、投資機会を広げることができます。生活資金に手を出さない範囲で、活用していってはいかがでしょうか。

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