株のリスクと対処法

株は安い時に買って高い時に売ることで、その差額が利益となるものです。しかし、その逆に高い時に買って安い時に売ってしまうことで損をしてしまいます。

こうなると、預けた資金が利益を生み出さなかっただけでなく、資産自体が減ってしまう元本割れを起こしてしまいます。このように株には銀行預金にはない、いくつかのリスクが存在します。今回は、こうした株に存在するリスクと、そのリスクに対する対処法についてお伝えします。

まずは、投資のリスクについて見ていきます。

投資にリスクはつきもの

大きな損失の可能性があることから、株式投資に踏み出すことができない初心者の方が一定数いると思います。実際、信用取引でレバレッジをかけて投資した結果、莫大な借金を背負ってしまったという旨の記事を目にすることも多いですよね。

しかし、実は株式投資に限らず、投資はリスクが必ず付きまといます。信用の高い預貯金ですら絶対的に安全だとはいえません。銀行の破たんリスクやインフレリスクを伴っているからです。

もちろん、銀行が破たんしても預金等の定額保護により1,000万円は保証されますし、過去数十年間の日本の状況を見ても資産はインフレにより目減りしていないことから、預貯金が安全資産であることは間違いありません。しかし、その裏にはリスクが隠れていることは覚えておきたいところです。

リスクプレミアムの考え方

投資の判断で利用できる「リスクプレミアム(RiskPremium)」という考え方があります。リスクプレミアムとは、リスクのある投資に対して、リスク分に上乗せする超過収益のことをいいます。

言い換えると、リスクのある投資に対して、「これだけの上乗せ利益がないと割に合わないよ!」と投資家が考える追加収益分のことです。

たとえば、比較的リスクの高いFX(外国為替証拠金取引)への投資を考えたときに、比較的リスクの低い定期預金よりも平均的な収益が低ければ割に合わないはずです。そのため、投資家は高いリスクであればあるほど高い利回りを望みます。

この投資家の期待する利回りを「期待収益率」をいい、以下の式で求められます。

「期待収益率=リスクフリーレート(安全資産の収益率)+リスクプレミアム(上乗せ利益)」

株の期待収益率

株式投資は、平均で年間おおよそ5~9%の利回りが得られます。この利回りには、リスクプレミアムが上乗せされており、株式投資が預貯金や国債などの安全資産と比較してリスクが含まれていることがわかります。

株のリスクの4つにわたる種類

ここでは、株式投資によるリスクを4種類に分けてご説明します。

元本割れリスク

すでにご説明したように、株には元本割れのリスクがあります。

株は購入時と売却時との差額が利益、もしくは損失となる金融資産ですが、資産が増える(=利益が出る)可能性もあれば資産が減る(=損失が出る)可能性もあります。

例えば、100万円の株を購入して、120万円で売却すると20万円の利益ですが、同じく100万円の株を購入して80万円で売却すると、20万円の損失です。短期間で100万円が120万円になる可能性もあれば、100万円の資産が80万円になって返ってくる可能性もあるのです。

倒産リスク

株には投資先の株式会社が倒産する倒産リスクがあります。倒産してしまうと、基本的に購入した株の価値は0になってしまいます。株をこれから始めようとする人が恐れるのがこの倒産リスクでしょう。

しかし、一般の人が購入する株は上場企業の株です。上場企業が倒産することはめったにありません。2015年に民事再生等の方法により実質的な倒産に陥った上場企業はわずか3社ですし、実際に倒産する前には様々な兆候があらわれます。また、仮に投資していた上場企業が倒産したとしても、所有している現金だけを投資する現物取引であれば最悪、投資していた資金を失うだけです。

上場廃止リスク

また、上場企業には倒産リスク以外にも上場廃止というリスクもあります。上場廃止になってしまうと、市場での株の売買が出来なくなってしまいます。こちらはTOB(株式公開買い付け)やMBO(経営陣などによる自社買収)等により買収される場合や、子会社化される場合、上場廃止基準に抵触した場合などが該当します。上場廃止の場合は実際に廃止される前に売買できる期間が設けられますし、場合によっては再上場することもあります。

流動性リスク

もう一つ、考えておきたいリスクが流動性リスクです。上場企業と言っても、株は買い手と売り手の希望価格がマッチして初めて取引が成立するものです。特に規模の小さな企業の場合、株を売却したいと思っても買い手がいなければすぐに売却できない可能性もあります。株の購入前には十分な取引量のある企業かどうかを確認しておくと良いでしょう。

それぞれのリスクに対する対処法

株のリスクを把握したら、それぞれのリスクに対する対処法を考えておきましょう。

元本割れリスクに対する対処法

株は、確率だけみれば、購入した次の瞬間に上昇するのも下落するのも5割ずつです。株を購入するにあたって元本割れのリスクを0にするのは不可能に近いことは分かるでしょう。そこで、元本割れリスクに対する対処法として、元本割れによる損失を最小限に抑える方法を考えてみます。たとえば、株を買った時の価格を覚えておき、買値の3%以上下落したら売却する等の自己ルールを設ける方法が有効です。

株と心理学 プロスペクト理論について知っておこう

どうして、買値の3%以上下落したら売却する自己ルールを設けることが元本割れリスクを最小限に抑えることにつながるのでしょうか?ここでは、株とは切って話すことのできない、人間の心理について説明します。

突然ですが、あなたは以下の2つの質問の内、どちらを選択しますか?

問1

  • ①100万円が無条件に手に入る
  • ②サイコロを振り、1の目が出たら何も手に入らないが、それ以外の目が出たら200万円もらえる。

問2

  • ③100万円無条件に損する。
  • ④サイコロを振り、1の目が出たら何も損しないが、それ以外の目が出たら200万円損する。

上記の問題は、プロスペクト理論と呼ばれる有名な人間心理についての問題で、数学的に見れば②と③を選ぶのが正解なのですが、実験の結果、得をする場面では堅実的な①の選択肢を、損をする場面ではリスクの高い④の選択肢を選ぶ人がほとんどだということが分かっています。

この理論を株に当てはめてみると、購入した株の株価が損失を出した場合、あなたには、

  • ①株を売却する
  • ②株を持ち続ける(再び上昇するのを待つ)

という2つの選択肢を持ちますが、数学的に見ると、どちらが得かどうかに関わらず、②の選択肢を選びやすい状態になってしまうのです。こうして、正確な判断力を失い、常に②の選択肢を選び続けてしまうと、負債額もどんどん大きくなってしまいます。

このような人間心理を自覚し、3%の損失が確定したら無条件で売却するという自己ルールを設けて、忠実に実行することが元本割れによるリスクを最小限に抑えることにつながります。

倒産リスクに対する対処法

株のリスクの内、倒産リスクに対する対処法も、基本的には元本割れに対する対処法が有効です。また、一般の投資家が購入するのは上場企業の株です。上場企業であれば会社四季報やインターネット等様々な方法で会社の情報を手に入れることができるので、購入前に会社の情報を確認しておくと良いでしょう。

また、インターネットの証券会社の中には無料で財務の健全性を判断してくれるツールが存在します。最初の内はこうした無料ツールを活用すると良いでしょう。

四季報による、倒産しそうな会社を見極めるコツ

四季報とは、年に4回発行される、全ての上場企業の決算を一覧にした冊子です。本屋さんで購入することもできますが、現在では証券会社で口座を開設するだけで、インターネット上で無料閲覧することができるようになっています。四季報を用いた財務判断にはさまざまな知識が必要になりますが、倒産リスクの回避のために確認しておきたいのが、有利子負債の額です。

有利子負債は、銀行からの借入や社債など毎年金利を支払う必要のある負債のことです。負債が多ければ悪い企業というわけではありませんが、当然、負債が少ないほど倒産リスクは少なくなります。負債が同業他社と比べて多いようであれば、なぜ多いのか、どのように返済していくのかといった情報を確認しておくと良いでしょう。

上場廃止リスクに対する対処法

上場廃止にはいくつかのパターンがあり、会社が完全子会社化されるパターンの場合や、自社株の全取得による上場廃止等の場合には株主にメリットがある場合もあり、上場廃止が必ずしも悪いわけではありません。上場廃止で一番損をするパターンは、経営状態が悪化して上場廃止に追い込まれるパターンです。この場合基本的には、元本割れリスクや倒産リスクに対する対処法と同じと考えて良いでしょう。

現物取引と信用取引

以上説明してきたように、一般的な現物取引による株式投資は、投資した金額だけのリスクを負えば良く、倒産リスクや上場廃止リスクもそう恐れることではありません。どこかで、全財産が吹き飛んだり、多額の借金を背負ったりした人の話を聞いたことがあるかもしれません。実際にはこうした人たちは、所有している現金以上の金額で株式投資を行う信用取引という方法で投資している人たちがほとんどです。

信用取引は、株の買い付けに必要な資金を証券会社から借りて売買を行う取引のことで、預けた資金を担保にして預けた資金以上の株の買い付けを可能にする方法です。例えば、100万円資金を預けて、3倍の300万円分の株を購入することが可能になります。信用取引であれば、利益が出れば3倍になりますが、損失が出てしまえば損失も3倍になります。

通常、証券会社で証券口座を開設すると、現物取引の口座を開設することになります。一方、信用取引をするためには金融資産や年収等を元に証券会社による審査を通過する必要があります。

信用取引で空売りをする

株の取引は、基本的には現物取引で行うことをおすすめします。一方、株価下落時にも利益を出す空売りという方法で取引を行うためには信用取引を行う必要があります。一般の株取引では、株価の低い内に購入した株を、高くなったところで売却することで、その差額が利益となります。

一方、空売りとは、所有していない株を、証券会社から借りて売り、株価が下がったところで買い戻しで証券会社に返すことで、その差額が利益となる方法です。一般の株取引と空売りを組み合わせることにより、株価の上昇局面でも、下落局面でも利益を出すことが可能になります。

なお、この場合でも保有資産以上の額を空売りしないようにしましょう。

自己ルールの徹底によるリスクの低減

以上、株にはこうしたリスクがあるので理解しておく必要がありますが、実際に株取引を開始すると上場廃止や倒産などはめったに起こらないことがわかると思います。購入時の3%下落したら売却するといった自己ルールや保有資産以上の額を投資しないといったことを忠実に守り、株式投資のリスクを最低限に抑えるようにしましょう。