仕手株について

「仕手株は相場の華」という格言があるように、株価が何十倍にも暴騰する仕手株は大きな利益を狙いたい投資家には大変魅力的です。株式専門紙や投資サイトには仕手株に関する情報や噂が溢れていますが、デタラメや信憑性に欠けるものが多く、鵜呑みにして取引すると大きな損失を出してしまいます。

今回は仕手株の定義や手口、見分け方など仕手株の取引で損失を出さないようにするポイントを紹介します。

仕手株とは

仕手株とは、資金力のある個人や特定の集団が、株価吊り上げや見せ玉などによって株価操縦し、高値で売り抜けるために投機的な取引の対象になりやすい銘柄のことをいいます。

ここ数年、証券取引等監視委員会や特捜部が株価操作などの相場操縦にあたる行為を厳しく取り締まるようになったことや、5%ルール(大量保有報告制度)によって大量保有報告書の提出が義務付けられたことにより、昔に比べて仕手株が生まれにくい相場環境になっていますが、最近ではヘッジファンドや機関投資家が資金力にモノを言わせて、仕手筋のように株価を大きく動かすケースが目立っています。

また、バブル期のように巨額な資金で相場を動かす仕手筋は鳴りを潜めていますが、中規模クラスの仕手筋や投資サークルなどが相場を仕掛けるケースも見られ、仕手株は今も存在しています。

仕手株の特徴

仕手株には明確な基準があるわけではなく、IR(企業が株主や投資家に対し、投資判断に必要な情報を提供する活動のこと)の発表により人気化して急騰する「材料株」と見分けることが難しいですが、一般的には以下の条件に該当する銘柄が仕手株として定義されています。

  1. 発行済み株式数が少ない小型株
  2. 時価総額の小さい低位株
  3. 業績が低迷している株
  4. 新興企業で評価が難しい株

また、仕手株の取引には以下のような手口がよく使われます。

玉集め(ぎょくあつめ)

仕手株を仕掛けるために、まずは玉集め(ぎょくあつめ)をします。玉集めとは、価格操作の対象となる株を買い集めることです。ターゲットにするのは小型株や低位株で、一気に買い集めるのではなく目立たないように時間をかけてコツコツ買い集めていきます。

株価吊り上げ

玉集めが終わると、次は株価の吊り上げを行います。ここでは相場の注目を集めるために、わざと目立つように株価を急騰させ、値上がり上昇率ランキングにランクインすることによって証券会社の自己ディーラーや個人投資家の買いを呼び込みます。

買い煽り

ある程度注目され始めてきたら、業界紙や情報誌に情報を流し、株式掲示板に買い煽りの書き込みをして個人投資家の提灯買いを誘います。提灯買いによってさらに急騰し、この頃から株価の過熱感に目をつけた投資家の空売りも入り始め、信用取り組みに厚みが出てきます。

ふるい落とし

値動きを軽くしてさらに上昇させるために、「冷やし玉」と呼ばれる意図的な売りを出して信用買いや高値の買いをふるい落とします。株価が下落し始めると、さらなる株価下落を見込んだ空売りが入り、ますます信用取り組みがタイトになります。

空売りの買い戻しに売りをぶつけて利益確定

再び買い上がって株価を上昇させることにより、空売りが損切りのための買い戻しを始め、株価はもう一段高となります。仕手筋は、この空売りの買い戻しに売りをぶつけて利益確定していきます。

仕手株はハイリスク・ハイリターン

仕手株は値動きが大きいことから、大きな利益を得ることもあれば大きな損失を出すこともあります。

たとえば、仕手集団「般若の会」代表の加藤あきら氏が手がけた新日本理化(4406)のケースを見てみると、加藤氏は2011年11月に「時々の鐘の音」というインターネットサイトを開設し、そのサイト上で「大化け銘柄」として新日本理化を推奨したことから株価は大暴騰し、同年10月に238円の安値をつけていた株価が、12月12日には930円まで急騰、わずか2カ月足らずで4倍近い上昇を見せました。

その後、株価はいったん調整したものの、さらにサイト上で買い煽りを続けたことから2012年に入り株価は再び反発、3月2日には年初来高値となる1,297円をつけ、4か月で5.4倍まで上昇しました。仮に2011年10月に238円で1,000株買って2012年3月2日に1297円で売った場合、1,059,000円の利益を得たことになります。

しかし翌営業日となる3月5日には、利食い売りが殺到したことから一転ストップ安まで急落し、28日には一時543円の安値をつけるまで下落、約58%も急落しました。仮に3月2日に1,297円で1,000株買って28日に543円で売った場合、わずか1カ月足らずで754,000円も損失を出したことになります。

このように、仕手株の取引は大きな利益を得る可能性がある半面、ハイリスクであることを認識しておかなければなりません。

仕手株と空売り

仕手株は、上昇局面だけでなく下落局面でも値幅が大きいため、空売りで利益を狙う投資家も多いですが、仕手株の空売りはリスクが大きい取引です。

仕手株は、発行済み株式数が少なく時価総額が小さい小型株である場合が多く、大口の買い注文が入り株価がストップ高まで上昇した場合、高値で買い戻さなければなりません。

最悪の場合、何日も連続でストップ高に張り付いたまま買い戻すことができず、追証が発生して一発で退場となってしまう可能性もあります。

「買いは家まで売りは命まで」という格言は、買いで失敗した場合は家を失い、売りの失敗は命を失うことになるという意味ですが、仕手株の売りはこの格言のように致命的なダメージを負う危険もあります。

仕手株と売り禁のリスク

売り禁とは、貸借銘柄において新規の売り建て(空売り)と現引きを禁止する措置です。

相場が過熱して空売りがたくさん入り、証券金融会社のひとつである日証金が株券の調達が困難になったと判断した場合に取られる措置で、通常は貸株注意喚起を経てから売り禁となりますが、緊急性の高い場合にはいきなり売り禁になる場合もあります。

一般的に、売り禁になると空売りと現引きが禁止されるため、出来高が減少して株価が下落する傾向にありますが、特に仕手株の場合は株価上昇の燃料となる空売りの踏み上げが期待できなくなることから、見切り売りが出やすく通常の銘柄より下落幅が大きくなる場合があります。

仕手株の見分け方

仕手株かどうかを見分けるのは経験者でも難しいですが、仕手株には動き方に特有のクセがあり、注意深く観察することによって仕手株かどうかある程度見分けることができます。ここでは、仕手株を見分けるポイントについて紹介します。

材料なく出来高が急増する

流動性が低い銘柄が、突如不自然に出来高が急増した銘柄は、仕手筋が「玉集め」をしている可能性があります。通常の出来高と比べ5倍から10倍に急増した銘柄は、まず間違いなく仕手筋や大口の手が入っていると考えられ、2倍から3倍程度の増加が何日も続く場合も、時間をかけて玉集めをしている可能性があります。

突如値上がり上昇率ランキングにランクインする

特に材料がないにもかかわらず、突如値上がり上昇率ランキングの上位にランクインしてくる銘柄も仕手株である可能性が高いです。ランクインで市場の注目が集まり、個人投資家の提灯買いを誘うことによって大商いとなり、大相場に発展するケースがあります。

板に見せ玉が出現する

仕手株といわれる銘柄の板情報には、見せ玉とみられる不自然な注文が出現することがあります。

見せ玉とは、取引を成立させる意思がないのに大量の売買注文を出し、約定前に注文を取り消し・訂正する行為のことで、見せ玉によって株価の上昇を抑え、安値で玉集めをする場合や、高値で空売りを仕込むために株価を吊り上げる場合によく使われます。

見せ玉は、意図的に相場操作する違法行為として法律で禁止されていますが、相場では往々にして見せ玉と思われる注文が見られます。

大量保有報告書に名前が載る

大量保有報告制度(5%ルール)により、発行済株式数の5%以上を取得した場合、5営業日以内に届出が必要で、大量保有報告書を見ればどこがその銘柄を買っているかわかります。また保有割合が1%変動する度に変更報告書の提出も必要なため、多少のタイムラグはありますが、変更報告書を見れば保有比率の増減も確認できます。

初心者の仕手株取引

仕手株の動きは、実際に仕掛けている本人にしかわかりません。利益確定や損切りが少し遅れただけで大きな損失になる可能性もあり、初心者は仕手株の取引を避けた方が無難です。

もし仕手株を取引する場合には、通常の銘柄を取引する以上に厳格な損切りルールを設けるなど、徹底したリスク管理が必要です。

仕手株以外にも取引できる銘柄はたくさんあります。いきなり仕手株に手を出して過度なリスクを取らず、十分経験を積んでから挑戦するのがよいでしょう。