株の空売りの仕組み

株で利益を出すには、「安く仕入れて高く売る」ことが原則です。そのため、株価に左右されずに企業の本質的な価値を見極め、価値を基準として割安な株を購入し、高く売ることが重要です。一般的には、「安く買ってから高く売る」順番になります。

実は、「高く売ってから安く買う」という逆転の発想で利益を出す方法も存在します。これを「空売り」といいます。

株の空売りを利用すると、投資手法の幅を広げるだけでなく、株主優待を簡単に手に入れる、大儲けができるなどのメリットがあります。下降トレンドでも儲けることができるため、初心者でも活用したい投資手法になります。

投資初心者のために株の空売りの仕組みを解説します。

株の空売りは信用取引のひとつ

株を買って株価が高くなったところで売った差益を利益とするのが、通常の株取引です。ところが、株式を買わすに借りるということもでき、この取引を「株の空売り」と言います。これは信用新規売りとも言われる信用取引の一種です。

信用取引を行うためには、信用取引口座が必要です。信用取引は、大きな額を動かせる分リスクも高く、明確な投資ルールを持つ投資家の方が運用しています。そのため、信用取引の口座開設の際は、資産状況や取引経験を元に審査が行われます。

株の空売りでは、まず株式を証券会社から借りて市場で売り、株価が下がったり上がったりした後で、株式を買い戻して決済します。株価が下がれば差益が出ますが、株価が上がれば損失となります。

株の空売りで利益を出す仕組み

株の空売りで利益を出す仕組みは、「安く買ってから高く売る仕組み」よりもイメージがしにくいものです。そこで、具体的な例を挙げて見てみましょう。以下はA社の株価の下落に便乗し、空売りで利益を得た例です。

A社の株価
空売りで利益が出る仕組み

5月24日に、A社の株を8,000円で売却したとします。空売りでは、証券会社から株を借りて売却しているので、後日同数の株を返さなければなりません。そこで5月26日に2,000円でA社の株を買い直して証券会社に返したとします。すると、手元には差分の6,000円が残り、自らの利益になります。

証券会社から借りた株を返す期限

空売りの仕組みはおぼろげながら見えてきたと思います。しかし、株は借り物ですから期限までに返さなければなりません。空売りを含めた信用取引には「制度信用取引」と「一般信用取引(無期限信用取引)」の2種類があり、それぞれ期限が異なります。

制度信用取引の期限は6ヵ月

制度信用取引とは、証券取引所が制定している「制度信用銘柄選定基準」を満たした銘柄を対象とした信用取引をいいます。制度信用取引の返却期限は6ヵ月後です。

一般信用取引(無期限信用取引)の期限は証券会社によってまちまち

一般信用取引とは、平成10年12月より導入された、投資家と証券会社の間で直接結ばれる信用取引をいいます。期限や銘柄が一律で決められている制度信用取引と比較して、信用返済期日や金利などを自由に決めることができます。

実際、証券会社により期限はまちまちです。SBI証券マネックス証券松井証券「原則無期限」の一方で、カブドットコム証券では「新規建玉の建日の3年目応当日」と返済期限が定められています。

※「新規建玉の建日の3年目応当日って?」
新規建玉は新しい売買注文を、建日は買いまたは売りの新規注文が約定した日を、応当日は契約日に応答する日をいいます。つまり、新規建玉の建日の3年目応当日とは、「空売りの新規注文が約定した日から3年後の同日」を指します。

株の空売りの3つのメリット

株の空売りという投資手法が各投資家に利用されているのは、メリットがあるからです。以下では3つのメリットを紹介します。

①相場の下落局面でも投資できる

通常は現物の株式は株価が高い場合には投資をしません。ところが、空売りが可能な場合には、株価が高い時に空売りをして株価が下落したところで買い戻すことができます。株価が安い時だけしか取引できない場合に比較して、選択肢が広がってきます。

②相場のリスクヘッジに利用できる

株価というのは、企業業績だけに影響を受けて変動するものではありません。日経平均株価が上下するような場合にその影響を受けることもあれば、為替相場の影響を受けることもあります。これらのリスクを避けるために空売りを利用することができるのです。

③塩漬け株を担保として利用できる

塩漬け株を空売りの担保として活用することができます。塩漬け株とは、株価の上昇を期待して購入したものの予想に反して下落が続き、売るに売れなくなってしまった株をいいます。損失の確定ができていないだけであり、売れば損失になることから含み損ともいいます。

空売りは信用取引であり、保証金を担保として差し出さなければなりませんが、有価証券や債券でも代用が可能なのです。この、担保にした株は、保証金の代わりの「代用証券」と呼ばれます。

本来であれば資産運用の邪魔になる塩漬け株ですが、上手に有効活用した例だといえます。

株の空売りを活用できる3つの場面

空売りのメリットを最大限に活かすには、最適な状況を見極める必要があります。以下では、空売りを活用できる場面を3つ紹介します。

①企業業績を悪化させる材料が出た場合、あるいは業績が悪化した場合

企業は定期的に業績の見通しについて発表しますが、業績の下方修正が発表されると株価は下がります。大きく下げてから、徐々に下落していくということがよくあります。このような場面では空売りで利益が出しやすくなります。

②公募増資などで株数が増加する場合

新しく株式を発行するにあたって不特定多数の投資家に株式を売ることを公募増資と言います。利益が増加しないのに株式数を増加させるので一株あたりの利益は減少します。それ反応して株価は下落するため、空売りを仕掛けやすくなります。

③大型株が買われ過ぎた場合

時価総額の高い銘柄を大型株と言いますが、このタイプの株式が何かの好材料が原因で一時的に株価がストップ高まで上昇することがあります。買われ過ぎた株は戻りで売り圧力がかかるので、空売りを仕掛けるには良いタイミングとなります。

株の空売りの5つのデメリット

株の空売りには、信用取引に伴うデメリットがあります。以下では5つのデメリットを紹介します。

①貸株料がかかる

株を買う場合とは違って、空売りには貸株料というものがかかってきます。空売りは、まず証券会社から株を借りてから売るため、買い戻すまでの間に株式の金利が発生します。この金利のことを貸株料と言うのです。金利は一日ごとに発生するため、短期間で決済しなければ支払うお金は増えてしまいます。

②逆日歩がかかる場合がある

証券会社が大量に株を貸し出してしまうと株が足りなくなることがあり、その場合には貸株料とは別に逆日歩を支払わなくてはなりません。貸株料と逆日歩を支払うようになると負担は大きくなります。

③株価急上昇のリスクがある

空売りは株価が下がったときに利益を得ることができるのであり、株価が上昇してしまうと損失が発生します。株価が上昇する場合には青天井となることもあるため、場合によっては何倍にもなる可能性があります。100万円で売った株式を買い戻すのに、何百万円ものお金が必要となる場合もあり、その場合には大きな損失となります。

④追証がかかる場合がある

代用証券である塩漬け株を担保として差し出し、塩漬け株の株価がさらに下落した場合、追証が発生することがあります。追証とは、信用取引のための保証金を追加で増やすことをいい、証券会社へ入金したり建玉の決済が必要になったりします。

⑤空売り規制がかかる場合がある

空売りには、空売りできる値段が規制されることがあります。株価が大きく動く銘柄は、売られ始めると止めどなく株価が安くなることがあります。株価の急激な下落は市場をパニックに陥らせることから、一時的に空売りを規制して歯止めをかけようとしているのです。

空売り規制は、当日の基準値段の10%以下であるトリガー価格を下回ると発動します。空売り規制発動後は、現在の株価である直近公表価格が規制の基準になります。直近公表価格を下回る空売り注文は金融商品取引法により規制され、売買ができなくなります。

空売りで損を最小限に留める2つの方法

空売りは信用取引のひとつですから、リスク管理を適切に行う必要があります。下降すると予想した銘柄の株価が上昇し、損失を被ることは珍しくないからです。以下では、損を最小限に留める方法を紹介します。

①投資上限金額をあらかじめ決めておく

必要以上に損を出さないためには、投資上限金額をあらかじめ決めておくことが重要です。空売りの際は、逆日歩や賃株料、株価の急激な上昇による思わぬ損失が出ることもあります。手持ち資金を把握して損失を見越し、生活資金に手を出さない範囲で投資する姿勢が求められます。

②損切りラインを設定しておく

投資上限金額を決めると、損切り注文のラインを設定できます。たとえば、株価が1.3倍になった時点で買い戻すことを決めておけば、過分な損失を防ぐことができますよね。

リスクを最小限に留めて儲ける

空売りは利益を増加させる上では避けては通れない道です。リスクを見越した上での空売りは、損失以上の利益をもたらすことでしょう。

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