株の配当所得にかかる税金について

配当所得は確定申告をすることも、しないこともできますが、実際どちらが良いのでしょうか?また、確定申告をする場合には総合課税と申告分離課税を選択することができますが、どのような場合に総合課税がお得でどのような場合に申告分離課税がお得なのでしょうか?以下で詳しく述べていきます。

配当を受け取った時にも税金がかかる

配当金は、配当を実施している会社の株式を、その会社の決算期末の時点(多くは3月末)に所有していた場合に受け取ることができるものです。株式投資をしていると、株式投資の売買差益に対する税金のことばかり考えてしまいますが、配当金に対しても税金が課されています。

基本的には確定申告不要

受け取った配当金は配当所得とみなされます。配当所得は原則として給与所得等他の所得と合算されて所得税と住民税が課されることとされていますが、特例として一定の要件を満たす場合には申告不要制度が設けられています。

この一定の要件とは、たとえば、上場株式に該当しない株式の配当(未上場株なので一般の方にはあまり関係がありません)について、その額が少額である場合には確定申告をしないでも良いとされています。また、大口株主(発行株済株式総数の3%以上を保有する株主)を除く個人が受ける上場株式等の配当等については、少額か多額かに関わらず確定申告不要制度の対象となっています。

ほとんどの個人投資家はこの後者の要件を満たすため、配当所得に対する税金に関しては、配当金受け取り時に源泉徴収されるだけで課税関係は終了し、確定申告をする必要はありません。

税額の計算方法

配当所得に課される税金は上場株式等の配当であれば一律20.315%となっています。大口株主の場合や、未上場株式の場合には一律20.42%となっています。

上場株式等の配当等(発行済株式の総数の3%以上を保有する株主を除く)
一律20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
課税方法:1.総合課税/2.申告分離課税/3.申告不要
上場株式等の配当等(発行済株式の総数の3%以上を保有する株主)・未上場株式等の配当等
少額配当の場合 少額配当以外の場合
一律20.42%
課税方法:
1.総合課税
2.申告不要
一律20.42%
課税方法:総合課税

総合課税と申告分離課税

ここまで説明してきたように、上場株式の配当金であれば基本的には確定申告は不要です。とはいえ、あくまでも手間を省くための制度であり、確定申告をすることで特をする場合もあります。

配当金の支払いの方法は、申告不要制度も併せると3つあります。

  1. 配当金に対して20.315%の税金が源泉徴収され、確定申告はしない。
  2. 確定申告をして総合課税を選択する。
  3. 確定申告をして申告分離課税を選択する。

それぞれについて見ていきましょう。

配当金に対して20.315%の税金が源泉徴収され、確定申告はしない。

上場株式の配当金であれば申告不要制度を利用できるため、配当金受取時の20.315%の源泉徴収が終了すれば、確定申告をする必要はありません。後述しますが、確定申告をして税金の還付を受けられる可能性もありますが、少額の場合も多いものです。

また、このように確定申告の必要がない場合の還付申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間遡って申告することができます。たとえば、平成27年分の確定申告をしなかったとしても、平成28年1月1日から平成32年12月31日までであれば遡って還付申告をすることができます。

確定申告をして総合課税を選択する。

配当金受け取り時に20.315%の税金を支払っていた場合でも、確定申告をすることができますが、この場合、給与所得等他の所得と一度合算して税率を算出する総合課税と、給与所得とは別に株や投資信託などの譲渡所得と合算して税率を算出する申告分離課税のどちらかを選ぶことができます。

総合課税を選択する場合は給与所得等と配当所得を合わせて所得税として税金が課されるので、給与所得等の総合課税対象の所得(不動産所得、事業所得、給与所得、一時所得、雑所得等)の所得が高い方はマイナスとなる可能性があります。また、たとえば奥様が働いていない場合等で、奥様名義で申告する場合にはご主人が受けていた配偶者控除が外れる可能性も考慮する必要があります。

配当控除

配当所得を総合課税で申告すると、配当控除を受けることができます。

課税総所得金額が1,000万円以下の場合
{剰余金の配当等に係る配当所得×10%}+
{証券投資信託の収益の分配に係る配当所得×5%}+
{一般外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得×2.5%}
課税総所得金額が1,000万円を超える場合
{(剰余金の配当等に係る配当所得金額−課税総所得金額+1,000万円)×10%}
+
{(課税総所得金額−1,000万円)×5%}

たとえば、投資先の配登金に係る配当金が10万円だった場合にはその内の10%、1万円の配当控除を受けることができます。配当控除は税額控除なので、最後に算出された税金からそのまま税金が還付されます。

確定申告をして申告分離課税を選択する。

申告分離課税とは、一部の所得を他の所得と分けて課税する制度のことで、配当所得の場合、土地や建物の譲渡所得や株式の譲渡所得、山林所得、退職所得等と合わせて申告することになります。申告分離課税を選択すると、配当控除を受けることはできなくなりますが、株式の売却損がある場合など他の深刻分離課税の対象所得でマイナスがある場合には、足し合わせて申告する損益通算をすることができます。

さらに、その年の確定申告で、申告分離課税対象の所得のマイナス分を控除し切れない場合にはマイナス分を3年間繰り越すことが認められています。

総合課税 申告分離課税 申告不要制度
税率 累進課税 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
配当控除 有り 無し 無し
損益通算 無し 有り 無し
扶養控除の判定 合計所得に含まれる 合計所得に含まれる 含まれない

総合課税と申告分離課税どちらを選ぶのがお得か

配当所得がある場合で確定申告をする際、総合課税と申告分離課税どちらを選ぶのがお得なのでしょうか?具体的な数字で比較してみましょう。

給与所得が300万円で、配当所得が20万円、譲渡損失が5万円ある場合

給与所得が300万円で、配当所得が20万円、譲渡損失が5万円ある場合で考えてみましょう。

総合課税の場合

総合課税を選択すると、給与所得等と合算して課税されます。
まず、平成28年の給与所得控除は以下のようになっています。

給与等の収入金額 控除額
180万円以下 40%
181万円~360万円 30%+18万円
361万円~660万円 20%+54万円
661万円~1,000万円 10%+120万円
1,001万円~1,500万円 5%+170万円
1,500万円~ 245万円

給与所得が300万円なので、300万円×30%+18万円=108万円の控除となります。
300万円(給与収入)-108万円(給与所得控除)+20万円(配当所得)-38万円(基礎控除)=174万円(課税所得)
※その他の控除等は考慮しません

次に、所得税の税率は以下です。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え、4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

所得税額=174万円×5%=8.7万円
そして、配当控除が20万円×10%=2万円あるので、8.7万円-2万円=6.7万円が税額となります。

申告分離課税の場合

配当所得を申告分離課税で申請する場合です。まずは総合課税の計算をします。

上記と同じく、300万円(給与所得)-108万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)=154万円となります。
所得税額=154万円×5%=7.7万円が所得税額。

申告分離課税は、株式の譲渡損失が5万円、配当所得が20万円あるので、20万円-5万円と損益通算した後、15.315%の税率を掛けます。
20万円(配当所得)-5万円(株式譲渡損失)×15.315%(所得税額)=約2.3万円
7.7万円+2.3万円=10万円となりました。

結果、総合課税では6.7万円、申告分離課税では10万円と、総合課税の方がお得であることが分かりました。

給与所得が1,000万円で、配当所得が20万円、譲渡損失が5万円ある場合

さて、次は給与所得が1,000万円ある場合です。分かりやすくするために他の数字は変えません。

総合所得の場合

給与所得が1,000万円なので、1,000万円×10%+120万円=220万円
1,000万円(給与所得)-220万円(給与所得控除)+20万円(配当所得)-38万円(基礎控除)=762万円(課税所得)
762万円(課税所得)×23%-63.6万円=111.66万円
配当控除が20万円(配当所得)×10%=2万円あるので、111.66万円-2万円=109.66万円が所得税額です。

申告分離課税の場合

先に総合課税分の計算をします。

1,000万円(給与所得)-220万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)=742万円(課税所得)
742万円(課税所得)×23%-63.6万円=107.06万円

申告分離分は、上記と同じ計算なので、約2.3万円となります。
107.06万円+2.3万円=109.36万円

総合課税が109.66万年、申告分離課税が109.36万円と、ほんの僅かですが、申告分離課税の方がお得ですね。
実際には所得が大きくなればその分投資額も大きくなるでしょう。基本的には、給与所得が高い場合には配当所得が大きくなればなるほど申告分離課税の方が特になります。

申告分離課税がお得になる目安

それでは、給与所得の所得がいくらを超えたら、申告分離課税がお得になるのでしょうか。それは、先に示した総合課税の所得税額表を見れば分かります。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え、4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

申告分離課税において、所得税額は一律15.315%となっています。つまり、上の総合課税の所得税表において、税率が15.315%を超えた時に申告分離課税制度がお得になります。つまり、課税所得が330万円を超えた場合ですね。

ここで分かることは、「課税所得が330万円以下の場合には確定申告をして総合課税を選択すると良い」ということです。

総合課税と申告分離課税を総合的に考える

配当所得の確定申告は、課税所得が330万円以下の場合には確定申告をして総合課税を選択すると良いということが分かりました。額は小さいですが、課税所得が少ない場合には確定申告をすることで還付を受けられる可能性があります。ただし、総合課税には配当所得があり、申告分離課税には他所得との譲渡損失があるため、必ずしも課税所得が330万円を超えたら申告分離課税が良い、というわけではなく、総合的に考える必要があります。