一日に株は何回売買できるのか

デイトレーダーとして、複数の画面を見ながら注文をさばき利益を積み重ねるというのは投資家にとって一度は夢見る情景ではないでしょうか。デイトレーダーは頻繁に売り買いを繰り返すので、実際どれぐらいまで取引回数を積み重ねられるものなのか、ということについて考えてみましょう。

カリスマデイトレーダーと呼ばれるような人たちは実際の取引の動画を公開していたりしますが、その境地になるまでには数えきれない勝利を積み重ねていかなくてはなりません。

実際のところ、1日の株の売買回数はどれぐらいまで積み上げていけるものなのでしょうか。

取引の早いデイトレーダーは買いを入れた後1分もしない間に決済の売りを出していたりします。1日の取引時間の合計4時間半で1分に1取引とするとなんと270回の取引となります。

実際のところ、どこまで取引回数をこなすことができるものなのでしょうか。それを考えるにあたってはいくつかの取引にまつわる制約についても知っておく必要があります。

1日に何回の売買ができるか

株の注文で最低限確認・実行することがあります。

  • 買い注文や売り注文の株数・価格・取引条件(成行注文か指値注文なのか等)の決定
  • 上記決定に従って画面上入力されているかどうかを確認して取引実行
  • 取引が成立しているかどうかを確認
  • 成立した取引の決済注文の株数・価格・取引条件の決定
  • 決済注文を出しておくか自分で決めた条件に株価が達したら決済取引を実行する

このような一連の作業を複数銘柄同時に行う必要があります。淡々と取引を繰り返すデイトレーダーであっても通常1日の取引量は100回までは行かないといわれています。30回程度が無理のないトレード回数といえるでしょう。

もちろん、理論的には100回を超える取引も可能ではありますが、そのように頻繁に取引を繰り返すのであれば1回当たりの取引株数を増やせばいいのであって、問題は利益確定のトレードをどれだけ積み増せるかが重要です。

資金面での制約(差金決済の禁止)

一日の取引回数を資金面から考えてみると、「差金決済」の禁止が制約として考えられます。差金決済とは、株を取引した場合に、現物株の引き渡しをせずに損益金だけをやり取りすることをいいます。

差金決済は現物取引と信用取引で取り扱いが異なります。

現物取引は差金決済が禁止

現物取引では差金決済が禁止されています。現物取引での差金決済の禁止には、ギャンブル性の高い取引の横行を防ぐ意味合いがあります。

デイトレーダーが株を買った日に売ってしまえば、残るのは利益か損失かのどちらかだけです。

現物取引では100万円の資金で100万円の株を買ってしまうと、その株を売るところまではできますが、もう1度同じ100万円の株を買うことができません。一方、前日100万円の株を買っていた場合、その株を売って別の100万円の株を買うことまではできます。

信用取引は差金決済が可能

信用取引では差金決済が可能です。2013年1月から信用取引の委託証拠金(保証金)の計算方法が変更になり、差金決済が解禁されたからです。

信用取引は、保証金の3倍のレバレッジをかけた取引が可能です。2013年までの信用取引では、1000万円の資金を使うと、その3倍の3000万円の売買注文を入れた段階で取引を終了しなければなりませんでした。

デイトレードであればすべて信用取引をすることとして、100万円の元手で300万円の資金枠が使えます。

差金決済が信用取引で解禁されたことで、信用取引を使った売買回数は事実上無制限となりました。もちろん、信用取引において担保は必要ですので、自己資金の3倍までしかポジションを取ることができません。

現物株で差金決済が禁止されているのに、信用取引で認めてしまうとギャンブル性の高い取引が信用取引で行われるようになってしまう危惧はあります。

しかし、信用取引を行うには証券会社の事前審査が必要なので、自己責任で取引ができる人だけが信用取引ができる建前となっています。

このため、信用取引で差金決済の要件が緩和されていて、100万円の資金を持っているだけでも300万円分の株取引をできますから、300万円の範囲内で買いポジションを持つのであれば無限に取引回数を積み増すことが可能です。

松井証券の即時決済取引への影響

補足ですが、2013年1月の信用取引の制度変更で差金決済が解禁されたことにより、松井証券「即時決済取引」サービスが休止となりました。

即時決済取引とは、「同一保証金を用いて一日に何度でも取引できる」サービスのことで、松井証券が信用取引規制緩和に先駆けて始めたものです。

差金決済が解禁される前は、同一保証金で日計り取引を繰り返すことができるサービスとして人気を博しており、松井証券の先見性が伺えます。

市場環境の制約

何度も株を購入するためには、市場環境の面でいくつかの制約があります。

流動性があること

デイトレードをするためには取引しようとしている銘柄に、一定以上の取引量が必要です。頻繁に売買される市場があって初めてデイトレードの回転売買は成立します。大きな取引量の中で目立たないように買いを入れ、人知れず利益確定売りをしているのが勝者となるデイトレーダーの真の姿です。

もし、ある株にデイトレーダーの大量買いが入ったとわかってしまえば、あとはそのトレーダーは手仕舞い売りを出すしかないため、先回りして空売りをかけられてしまいます。

こうなると、大量の買いを持っているデイトレーダーは自分の持ち株の売りに出すたびに株価を下げていってしまい、自分で自分の首を絞めることになります。

このため、株を頻繁に売買するための条件としてデイトレーダー自身の取引が目立たない程度の取引量(流動性)が必要なのです。

ボラティリティがあること

株取引は安く買って高く売る(または高く空売りして安く買い戻す)ことが基本ですから、1日のうちで上下を繰り返す変動(ボラティリティ)が必要です。取引開始直後についた株価が終日変わらないというのであれば、手数料分だけ負けを積み上げていくことになりますから、取引時間中のボラティリティは必要です。

こうしたボラティリティのある銘柄というのはそれほど多くは無いというのが現実です。

取引量の多い銘柄は沢山ありますが、そうした銘柄は値動きに乏しいことがほとんどです。このような値動きに乏しい銘柄をデイトレードしても無意味なので、ボラティリティは出トレードに必須の条件といえます。

投資家の個人環境を整える必要性

短期間のうちに売買を繰り返す取引においてはチャート分析が欠かせません。最近では証券会社のディーラーが取引する様子もニュースで流れるようになりましたが、6面ディスプレイ程度の複数の画面をチェックしながら取引している様子が報道されたりしています。

1銘柄のみ追いかけているのであれば画面は2面程度で問題ないでしょうが、チャート画面だけでも5面、その他ニュース等の画面で1面は欲しいところです。

取引を執行する画面が必要ということになれば、さらにディスプレイを要しておく必要があります。

このように、複数の銘柄を同時にチェックしてチャンスを探す必要がありますが、それを用意できないトレーダーは取引回数も限定されてしまうことになります。

金融リテラシー(チャート経験則の知識等)

デイトレードを実践するということは、証券会社専属のディーラーと勝負することに他なりません。証券会社のディーラーは1日ごとに厳格にリスク管理されており、そのリスク許容度を超えた取引は決してすることはありません。

「ボックス圏から抜けたときには抜けた方向につけ」というような経験則があります。たとえば株価が1000円から1200円の間を長期にわたり上下行ったり来たりしたとします。そこから1200円を超えてきた場合、一気に上昇する可能性があるので多くの市場参加者は「買い」で参戦してきます。

もちろん、それに反対する「逆張り」投資家もいますが証券会社のディーラーは逆張りで対処することは少ないです。「逆張り」投資家は個人投資家が多いとされていて、「逆張り」投資家は損失が大きくなる傾向にあります。

裏を返せば、こうした買いの条件が整うまでは多くの投資家は静観しているので、金融リテラシーの高い投資家ほど取引回数にはこだわらないといえます。

なぜデイトレーダーは取引を繰り返すのか

証券会社によっては取引回数をいくら増やしても取引手数料が変わらないといったものもあります。この場合には、取引回数がいくら増えようとも手数料が変わらないとなれば、最大限取引回数を増やしていきたい誘惑に駆られるかもしれません。

デイトレーダーの取引回数は多いのは事実です。ではなぜデイトレーダーはそこまでして取引回数を増やしていくのでしょうか。

これはすべての投資家にいえることですが、現金のポジションを保持している時間が貴重なものだからです。

デイトレーダーは買い注文が成立したと思ったら5分後に売っているということはよくあります。これは取引をするということが自分の資金をリスクにさらしているという事実を非常に重く見ているからです。

少しでもリスクにさらされている資金を短期間で引き上げておきたい、という感覚は長期投資家も見習うべき部分があるはずです。

市場ではいつリスクが顕在化して資産を減少させるのか分かりません。長期投資家はそうしたリスクを引き受けて資金を市場にさらしているわけですが、ともするとリスクに鈍感になる傾向にあります。

東日本大震災のあと、株式市場は暴落しました。日本では今後も大きな地震が予想されていますからデイトレーダーの資金管理、つまり現金保持が基本だということを忘れてはならないのです。

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