追証について

信用取引について知っている人なら追証(おいしょう)という言葉を聞いたことがあるかと思います。「追証が発生すると危険だ」という話を聞いたことはあっても、具体的にどういう危険があり、それに対処するにはどうしたら良いのかという疑問を持たれている方も多いでしょう。

ここでは、追証が発生した場合にやるべきことと対処方法について、投資初心者の方でもわかるように解説します。

追証は追加で差し入れる保証金

信用取引においては、取引をするにあたって必ず委託保証金というものを差し入れなくてはなりません。各証券会社で定められている、売買代金の総額に対する一定の比率である委託保証金率により、委託保証金は決まってきます。法律では30%以上かつ30万円以上と定められており、それ以上の率は証券会社ごとの判断で、任意に設定できることになっています。

ところが、委託保証金率内で新規取引を開始したにも関わらず、追加で委託保証金を収めなければならなくなることがあります。具体的には、信用取引で売買した株式の株価や、担保として提供していた株式・投資信託等の株価が下落し、各証券会社が定める「委託保証金維持率」を割り込んでしまった場合です。

委託保証金維持率を割り込むと、追加で委託保証金を差し入れて委託保証金率を基準に達するまで引き上げる必要があります。この追加で差し入れる委託保証金のことを「追加保証金」、略して追証といい、追証が発生する保証金最低維持率を追証ラインといいます。追証が発生してしまった場合には、原則として発生日から2営業日後までに現金を差し入れる必要があります。なお、追証が発生するかどうかの判断は当日営業日終了時点で値洗いされた上で判断されます。

SBI証券は最安の20%

法令では、追証ラインの下限値である最低委託保証金維持率が20%と定められています。各証券会社は20%以上の範囲で委託保証金維持率を自由に定めることができ、SBI証券では最安の20%に設定されています。

保証金維持率ごとに必要になる手続きは各社異なっており、投資家が理解できるようヘルプのページが用意されていることがほとんどです。信用取引を利用する際には、追証に関わるルールについて、会社ごとの説明文を一読し理解しておくようにしましょう。

定められた日までに保証金維持率を回復できなければ、証券会社は未決済分の株式である建玉を強制的に反対売買するなど、厳しい対処がなされます。

建玉評価損について

建玉の株価が上下することによって評価損益が変動します。買建てした建玉の株価が下落した時と、売建てした建玉の株価が上昇した時、それぞれ評価損が発生することになります。

なお、買建てた株と代用有価証券として差し入れる株が同じであること「二階建て」といいますが、建玉の株価が下落した場合、建玉の評価損と、代用有価証券の評価減が同時に発生して、あっという間に追証が発生してしまうことがあります。

建玉の株価が上昇した場合は、建玉と代用有価証券の評価益がみるみる拡大するという可能性もありますが、株式の値動きについては何が起こるか誰にも分かりませんから、リスク管理上は好ましくはないといえます。

追証と預かり金不足の違い

信用取引の反対売買を行った際に実現損が発生して、それを証券口座内の現金で清算できない場合、預かり金不足の状態になります。こうなると、指定された期日までに入金を行うか、保証金から振替えをするかのいずれかの手続きが必要になります。

ともに現金の振替えを要求されるアラートのため、追証と混同されやすい部分ではあります。しかし追証は、あくまで信用取引における含み損が証拠金を超えた場合に起こるものであり別な話です。

ちなみに、預り金不足の解消を要請されたものの期日までに手続きがなされなかった場合には、信用取引口座での新規取引についての規制や、証券会社が任意で保有の現物株の処分もあり得ます。信用取引の決済時に損失が発生する場合には、受渡日に現金が不足しないかを確認するようにしましょう。

追証が発生した場合にやるべきこと

信用取引を行っていると追証が発生する可能性があるのは当然ですが、もし追証が発生したらその取引を継続するのか、あるいは取引をやめるのかを即座に決めることが重要です。

もし、そのポジションを継続保有するのであれば、翌々営業日の15時30分までに追証を解消する必要があります。具体的には、委託保証金率を回復させるだけの入金を行うか、あるいは担保の株式によって反対売買を行って建玉を決済する方法があります。定められた日までに追証が解消されなければ、証券会社により強制的にその取引が決済されます。

追証が一度発生し、建玉を解消せず保有を続ける場合は、その後に株価の値上がりによって委託保証金率が規定のラインを回復した場合でも、入金が必要になります。

追証への4つの対処方法

信用取引は、自己資金以上の金額を売買できる魅力的な取引ですが、レバレッジをかけられるために投資額以上の損失を被ることもあります。あらかじめ、追証を発生させないように、リスク量を適切に管理した上での取引を心がける必要があります。追証への対処方法は以下の4つがあります。

①保証金の限度枠いっぱいの取引はひかえる

信用取引においては委託保証金の約3倍まで取引が可能ですが、これはあくまでも上限です。3倍よりも低い倍率で取引し、保証金を多めに差し入れることで、追証が発生するリスクを下げることができます。

保証金の限度枠いっぱいまでの取引は控え、その時々の維持率や建玉評価損益合計を画面で確認しながら、信用建て余力に余裕のある状態を保っておくことが重要です。

②保証金はなるべく現金を選択する

保有している現物株式を代用有価証券として差し入れる場合、その株価が下落した場合に担保価値が下がり、保証金の評価額が減少します。追証が発生するリスクを下げるには、保証金はなるべく現金を選択することが重要です。現金だけを保証金として差し入れておくことができれば、信用取引をしている株式の含み損だけに限定されるため、リスクを抑えられます。

また、保証金を代用有価証券で差し入れる場合、証券会社の判断で掛目の変更・除外が行われることもありますので、合わせて注意しましょう。

③損切りはすぐに行う

株価というのは、何らかのニュースや企業からの開示、需給の影響によって突然激しい値動きをすることがあります。信用取引で取引している株式の株価が自分の想定していた値動きと逆に激しく動いた場合、あっという間に追証が発生してしまうこともあり得ます。そのような状況になったときには、すぐに損切りをすることが重要です。この取引はミスだと判断したら、即座に返済注文を出すようにしましょう。

また、「含み損が○%を超えたら損切りする」といったように、事前にルールを設定して、それを機械的に守ることも有効です。建玉の評価損が大きくなればなるほど冷静に株価を予想するのが難しくなりますから、一度建てたポジションにこだわりすぎないことも重要です。

④逆指値をうまく活用する

株式の注文方法は大きく2種類に分けられます。「指定した金額まで上がったら売り」「指定した金額まで下がったら買い」というのが「指値注文」です。逆に、「指定した金額まで上がったら買い」「指定した金額まで下がったら売り」というのが「逆指値」です。

指値注文は株式を安値で購入して高値で売却するための注文方法です。ところが、逆指値は株価が下落する場面に対応して素早く損切りをして、リスクをコントロールできる注文方法です。株価がいくらになったときに損切りするかをご自身で任意に設定できるため、相場に張り付いて監視する必要はありません。また、逆指値は利益を確定させる場合にも活用することができます。

以下では、逆指値の具体的な活用例をご紹介します。

相場の下落により追証が発生する前に損切りを行う

たとえば、1,000円で信用買いした株式が、950円まで下落してしまい、910円を割り込んで追証が発生するとします。相場が反転し株価が上昇することも期待できますが、920円まで下落した場合には損失が出るので、その前に売りたいと考えたとします。このような場合には920円で逆指値の売り注文を出しておけば、追証を回避できます。

相場の反転を予想して利益確定する

たとえば、1,000円で空売りした株式が950円まで下落し、含み益があるとします。今後まだ下落し利益を伸ばせるかもしれませんが、大幅に値上がりしてしまう可能性もあるとします。このときに少なくとも4%の利益は確保したいと考えた場合、960円で逆指値の買い注文を出しておくことで、利益を確保できることになります。

追証を支払えないときに起こること

追証は「翌営業日」か「翌々営業日」の15時30分までに支払う必要があります。支払えない場合はペナルティーが課されることになります。

①翌営業日までに解消できない場合

追証を翌営業日までに支払えない場合、新規注文を含めた取引にいくつかの制限がかけられます。具体的には、出金、信用建玉の新規注文、買建てしているポジションの現引き、および現物株の買付けができなくなります。

②翌々営業日までに解消できない場合

また、追証を翌々営業日目までに支払えない場合、追証発生日の3営業日後の寄付きで保有している全ての建玉について反対売買、つまりは強制決済がなされます。ご自身が保有建玉について決済注文を出していた場合でも、証券会社によって注文内容が変更され、とにかく現金化されることになります。

強制決済によって決済損が発生した場合、まずは預り金や安全性の高い債券であるMRF(マネーリザーブファンド)で精算が行われますが、さらに不足金がある場合には証券会社の任意で代用有価証券が売却され、決済されます。その上で必要金額が不足してしまうケースでは、新たに入金しなければなりません。

必要な入金額を支払えない場合には、証券会社への債務が発生するということになります。この債務の返済ができないままにしておくと、証券会社側から法的な措置を取られる可能性もあるため、早々に証券会社と話し合い、分割返済などの相談をするのが望ましいでしょう。

相談に応じてもらえない場合や、相談において何か問題が起きた場合には、「証券・金融商品あっせん相談センター(フィンマック)」に中立な立場で話を聞いてもらい、裁判によらず話し合いにおいて問題解決をはかることもできます。

追証を発生させない範囲での信用取引を

信用取引は、うまく利用すれば非常に便利なものですが、買付けのための資金か空売りのための株式を証券会社から借りて行う、現物取引よりもリスクの高い取引です。株価の変動が激しい局面では大きな損失を負う可能性を認識した上で、適切なポジションサイズのもと、追証を発生させないように注意を払って取引しましょう。